2012年6月15日金曜日

淡窓詩話(14)

淡窓詩話(13)の問答の続きです。
問 一句一聯の妙處は、古人の論を聞きて之を曉れり。篇法の妙に至りては、未だ窺ひ知ること能はず。願はくば其一端を聞かん。


韋蘇州が「故園渺何處」(「聞雁」 故園眇何處。歸思方悠哉。淮南秋雨夜。高齋聞雁来。 )の絶句を、沈德潛論じて曰はく、「淮南秋雨夜」の二句、起承に置くべき所なり。却て之を轉結に置く。此詩の妙處、全く此に在り」と。予以爲へらく。王之渙が「白日依山盡。黄河入海流。欲千里目。更上一層樓(鸛鵲樓)」、是も亦韋が詩と同趣なり。「白日」の二句は登樓の見る所なれば、後に出すべきを、前に揭げ、結句に至りて、始て登樓の事を云ふ。是れ篇法の妙なり。七絶にも此法多し。推して知るべし。



淡窓詩話(15)に続く