前回は『唐詩選』に収録されている「張九齡」の五言絶句「照鏡見白髮」の詩韻を漢和辞典で調べた。今回は、その詩韻を「四声」 と「平仄」の面から調べてみる。
原文 照鏡見白髮宿 昔 青 雲 志蹉 跎 白 髮 年誰 知 明 鏡 裏形 影 自 相 憐
読み方 鏡に照らして白髮を見る宿昔 青雲の志、蹉跎たり 白髮の年。誰か知らん 明鏡の裏、形影 自ら相憐れまんとは。
五言絶句「照鏡見白髮」の四声を調べる
前回、五言絶句「照鏡見白髮」の詩韻を漢和辞典を使って調べた。
宿 昔 青 雲 志、蹉 跎 白 髮 年。↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓。屋 陌 青 文 寘、歌 歌 陌 月 先。韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻。誰 知 明 鏡 裏、形 影 自 相 憐。↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓。支 支 庚 敬 紙、青 梗 寘 陽 先。韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻。
次に、それぞれの韻が「四声」、すなわち「平声」、「上声」、「去声」、「入声」のいずれに分類されるかを調べる。
その結果は次の通りだ。
宿 昔 青 雲 志、蹉 跎 白 髮 年。↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓屋 陌 青 文 寘、歌 歌 陌 月 先韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 入 入 平 平 去、平 平 入 入 平声 声 声 声 声、声 声 声 声 声誰 知 明 鏡 裏、形 影 自 相 憐。↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓支 支 庚 敬 紙、青 梗 寘 陽 先韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 平 平 平 去 上、平 上 去 平 平声 声 声 声 声、声 声 声 声 声
さて、次に「平仄」については、四声の内、「平声」以外はすべて「仄声」になるから、結果は次のようになる。
宿 昔 青 雲 志、蹉 跎 白 髮 年。↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓屋 陌 青 文 寘、歌 歌 陌 月 先韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 入 入 平 平 去、平 平 入 入 平声 声 声 声 声、声 声 声 声 声↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 仄 仄 平 平 仄、平 平 仄 仄 平誰 知 明 鏡 裏、形 影 自 相 憐。↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓支 支 庚 敬 紙、青 梗 寘 陽 先韻 韻 韻 韻 韻、韻 韻 韻 韻 韻↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓ 平 平 平 去 上、平 上 去 平 平声 声 声 声 声、声 声 声 声 声 ↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓平 平 平 仄 仄、平 仄 仄 平 平
ここまで調べた結果を平仄のみに注目すれば次のようになる。
宿 昔 青 雲 志、蹉 跎 白 髮 年。↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓仄 仄 平 平 仄、平 平 仄 仄 平誰 知 明 鏡 裏、形 影 自 相 憐。↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓平 平 平 仄 仄、平 仄 仄 平 平
さらに、昔から仄声を黒丸「●」、平声を白丸「○」で表記することも多い。また四声を表記するための記号を「圏点」と呼ぶが、この平仄を表す記号も「圏点」の一種である。
宿 昔 青 雲 志、蹉 跎 白 髮 年。↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓● ● ○ ○ ●、○ ○ ● ● ○誰 知 明 鏡 裏、形 影 自 相 憐。↓ ↓ ↓ ↓ ↓、↓ ↓ ↓ ↓ ↓○ ○ ○ ● ●、○ ● ● ○ ○
今後は、特に断りない場合には、白丸、黒丸は平仄を意味するものとして用いることにする。
今回のキーワード
詩韻,唐詩選,張九齡,照鏡見白髮,四声,平声,上声,去声,入声,平仄,仄声,圏点
今回の独習で使用したテキスト
戸川 芳郎 (監修), 佐藤 進 (編集), 濱口 富士雄 (編集)(2006年)『全訳 漢辞海 第二版』三省堂
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