前回は文字「中」の韻を漢和辞典で調べました。
その結果、文字「中」は平声(上平声)東韻の場合と去声)送韻の場合があることがわかりました。
このようにひとつの文字が二つ以上の韻を持つ文字を両韻文字あるいは単に両韻と言います。
今回は、同じ両韻文字でも前回の「中」とは、少し異なる文字「看」について同じ要領で漢和辞典を調べてみます。
「看」の字を調べてみる
角川の「字源」を使って「看」という字を調べると次のように出ています。
このとき赤丸で囲まれている部分に注目します。「看」の文字は平声(上平声)寒韻と去声翰韻の二種類の韻を持っていることがわかります。ただし、前回の「中」と違い丸数字は付いていません。
これまで平水韻あるいは詩韻と呼ばれる韻の種類は百六韻あり、その韻は平声、上声、去声、入声の四声と呼ばれる四つのグループに分類されることを学習してきました。さらに、四声は平声と仄声の二つに分類されることも学習しました。
この平声と仄声を合わせて「平仄」と呼び、平声の文字を平字あるいは平韻の文字、仄声の文字を仄字あるいは仄韻の文字とも言います。この平仄の分類は、詩を作る時に重要な意味を持ってきます。
この平仄に注目して前回の「中」の韻を考えると、意味よって平韻と仄韻を使い分ける両韻文字ということになります。そのため意味と韻の対応関係を表すために丸数字が付番されていました。
これに対して「看」の文字は、異なる韻に丸数字による違いが明示されていません。これは「看」の文字が両韻文字であり、なおかつ意味による韻の違いのない、平韻と仄韻どちらでもよい文字ということを表しています。そのため「看」のような両韻文字を平仄両用と呼んでいます。
このように両韻文字には、意味によって平仄の使い分けがある場合と平仄両用の場合があることに注意が必要です。
次回は、今回学習したことを使って、漢詩の平仄について初歩的な部分を学習してみようと思います。
今回のキーワード
字源,平声,上平声,東韻,去声,送韻,両韻文字,両韻,寒韻,翰韻,平水韻,詩韻,百六韻,上声,入声,四声,平声,仄声,平仄,平字,平韻,仄字,仄韻,平仄両用
今回の独習で使用したテキスト
簡野道明(著)(1955年)『増補 字源』角川書店
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