問 一句一聯の妙處は、古人の論を聞きて之を曉れり。篇法の妙に至りては、未だ窺ひ知ること能はず。願はくば其一端を聞かん。
李白が「越中懷古」(「越中懷古」 越王勾踐破レ呉歸。義士還レ家盡綿衣。宮女如レ花滿二春殿一。只今惟有二鷓鴣飛一。)、前三句に古を叙べ、後一句に今を叙べたり。是れ亦奇法なり。古今を二句づ﹅に分ち叙ぶることは、通例の法なり。少陵が「花隱掖垣暮」(「春宿左省」 花隱掖垣暮。啾啾棲鳥過。星臨二萬戶一動。月傍二九霄一多。不レ寢聽二金鑰一。因レ風想二玉珂一。明朝有二封事一。數問夜如何。 )の詩、第一聯に暮色を叙べ、第二聯に夜色を叙べ、第三聯に曉に近きの情事を叙べ、第四聯に明朝の字を下す。篇法森然秩然たるものなり。「春夜喜レ雨」の詩(「 春夜喜レ雨 」 好雨知二時節一。當春乃發生。隨レ風潛入レ夜。潤レ物細無レ聲。野徑雲倶黑。江船火獨明。曉看紅濕處。花重錦官城。)も亦然り。第一聯晝間を叙べ、第二聯「入レ夜」の字を下す。第三聯深夜の景を叙べ、第四聯「曉看」の字を下せり。凡そ脈絡は貫通するを貴ぶ。 然れども亦甚だ露る﹅を忌むなり。
淡窓詩話(16)に続く