問 一句一聯の妙處は、古人の論を聞きて之を曉れり。篇法の妙に至りては、未だ窺ひ知ること能はず。願はくば其一端を聞かん。
七古の短篇、柳宗元が「漁翁夜傍二西巖一宿」(「漁翁」 漁翁夜傍二西巖一宿。曉汲二清湘一燃二楚竹一。煙銷日出不レ見レ人。欸乃一聲山水綠。迴二看天際一下二中流一。巖上無レ心雲相逐。)、「楊白花風吹渡二江水一」(「楊白花」 楊白花風吹渡二江水一。坐令三宮樹無二顏色一。搖蕩春光千萬里。茫茫曉日下二長秋一。哀歌未レ斷城鴉起。)の二首、絶妙と稱すべし。予此二首に於て、頗る短古の趣を悟ることを得たり。然れども言に傳ふべからず。大抵短篇は奇峭なるに宜し。平穩に宜しからず。
八句の七古、岑參が「今年花似二去年好一」(「韋員外家花樹歌」 今年花似二去年好一。去年人到二今年老一。始知人老不レ如レ花。可レ惜落花君莫レ掃。君家兄弟不レ可レ當。列卿御史尚書郞。朝囘花底恒會レ客。花撲二玉缸一春酒香。)、衛萬が「君不レ見呉王宮閣臨レ江起」(「呉宮怨」 君不レ見呉王宮閣臨レ江起
。不レ捲二珠簾一見二江水一。曉氣晴來雙閣間。潮聲夜落千門裏。勾踐城中非二舊春一。姑蘇臺下起二黄塵一。秖今惟有二西江月一。曾照二呉王宮裏人一。)の如き、雋永の味あり。法とすべきものなり。
五古の長篇は、「孔雀東南飛」を以て祖とす。之に次で少陵が「北征」則るべし。七古長篇は、大白が「憶昔洛陽董糟邱」、少陵が「將軍魏武之子孫」の如き、雅健にして則るべし。香山が五古七古、極めて長篇多し。今人の平易冗弱の門を開く者なり。則るべからず。
以上にて,問「一句一聯の妙處は、古人の論を聞きて之を曉れり。篇法の妙に至りては、未だ窺ひ知ること能はず。願はくば其一端を聞かん。」の問答は終わりです。