前回の独習で、「韻」とは韻母の「介音」を除いた残りの部分と「声調」の組み合わせであることを学習しました。
韻=【主母音+韻尾】/声調
また、「韻書」と呼ばれる書物の存在と「切韻」、「中古音」、「切韻音系」などの言葉、さらには「韻」のことを「詩韻」とも呼ぶことを紹介したところまでを独習しました。
今回は、この「韻書」について、もう少し独習を進めてみたいと思います。
韻書と切韻音系
韻書とは、漢字を韻ごとに分類した字書のことです。その起源は三世紀頃と言われていますが、現在まで残っている最も古いものが『切韻』という韻書です。それ以前の韻書も、いくつか存在したようですが現代には伝わっていません。
『切韻』が著されたのは隋代(六〇一年)と言われています。この時代を「中古」と呼び、中国音韻学では、その音韻体系を「中古音」あるいは「切韻音系」と呼びます。
ただし、この『切韻』も原書は現存していませんが、『切韻』を増補改訂した『広韻』によって代用されています。この『広韻』では、韻の分類数が二〇六韻となっています。
ところで「韻書」の目的は何でしょうか?
「韻書」は、漢字を韻ごとに分類した字書ですが、当然その使われ方としては漢字の韻を知る必要があったからです。その目的は「韻文」を作るためでした。韻文には詩、詞、賦などありますが、これからも多く取り上げるであろう「漢詩」も、この「韻文」になります。
次に、私が興味を持っている「漢詩」を作る、つまり作詩参考書としての「韻書」について考えてみます。
『広韻』では、韻の数が二〇六韻もありました。この数の多さは一つの韻に属する漢字の数が少なくなることを意味し、非常に不便でした。そこで複数の韻を「通用」するなどして許容できる範囲を設けていたようです。そのため、『広韻』では異なる韻であった漢字が一つの韻として分類されるようになりました。
その結果、一二五三年に金の平陽県で刊行された『韻略』は、韻の数を百七韻としました。この韻書は刊行地名から「平水韻」と呼ばれました。その後、さらに一韻減少して百六韻となり現在に到っています。
この「平水韻」による韻が「詩韻」と呼ばれ、私たちが使用している漢和辞典に掲載されている韻になります。また、漢詩の作詩に使用する韻も、この平水韻を使用します。
次回は、この「平水韻」について、独習したいと思います。
今回のキーワード
韻,声調,韻書,切韻,中古音,切韻音系,詩韻,広韻,韻文,漢詩,韻略,平水韻
今回の独習で使用したテキスト
小川環樹・西田太一郎・赤塚忠(編)(1968年)『新字源』角川書店(現在は改訂新版になっています)
戸川芳郎(監)・佐藤進・濱口富士雄(編)(2000年)『全訳 漢辞海』三省堂
今回の独習で参考にしたサイト
『Wikipedia』(URL: https://ja.wikipedia.org/)
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