ここでは、主に「白文」、「訓読文」、「書き下し文(読み下し文)」の違いと、漢字の新字体、旧字体について独習(本サイトの作者である滄洲が学習するので「独習」という言葉を使うことにしました)します。なお、今回の独習に使用する漢文(漢詩)は、これまで何度か登場した李白の「静夜思」です。
白文についての独習
漢字は、もともと中国から輸入されたものですが、その中国では「簡体字」と「繁体字」と呼ばれ、字体の異なる漢字があります。同様に日本においても「新字体」と「旧字体」と呼ばれ、字体の異なる漢字があります。
ここで、使用する漢字を一応定めておきます。当然と言えば当然なのですが、これまでの例も、また、これからの例についても「日本の漢字」を使用します。
さて、「白文」ですが、これは原文としての漢文であり、単純に漢字の羅列として表現されるものです。
靜夜思 李白
牀前看月光疑是地上霜擧頭望山月低頭思故郷
また、本来、古典である原文には句読点はないのですが、それでは「切れ目」がどこにあるのかわかりにくいので、句読点を付けたものもあります。
靜夜思 李白
牀前看月光、疑是地上霜。擧頭望山月、低頭思故郷。
中国においても「標点符号」と呼ばれる「,」「。」や「?!」などの記号を使用することがあります。
靜夜思 李白
牀前看月光,疑是地上霜。擧頭望山月,低頭思故郷。
本サイトでは、この句読点が付いた漢文も「白文」として扱います。また、「白文」において漢字は「本字(正字)」と呼ばれる主に「旧字体」と呼ばれる文字を多くは使用します(旧字体が必ず本字ということではありません)。
注意:
ただし、文字コード(文字の電子符号化)としては「UTF-8」を使用していますが、このコード体系がすべての漢字を表現できるわけではないので、その場合は、俗字や略字を使用することもあります。
また、「静夜思」は五言絶句なので、次のように改行して表示することもあります。
靜 夜 思 李白
牀 前 看 月 光
疑 是 地 上 霜
擧 頭 望 山 月
低 頭 思 故 郷
あるいは、縦書きの画像を使用することも多々あります。
訓読文についての独習
「訓読文」とは、「白文」に「返り点」や「送りがな」を付加して、漢文を日本語として読めるようにしたものです。
靜 夜 思 李白
牀 前 看二月 光一、疑 是 地 上 霜。擧レ頭 望二山 月一、低レ頭 思二故 郷一。
この例では、「返り点」のみで「送りがな」を付けていませんが、「返り点」は、あくまで日本語として読むための語順を表記したもので、中国語としての原文、つまり白文にはないものです。そのため、これも「訓読文」となります。
なお、「訓読文」では主に「歴史的仮名遣い」を使用します(ただし、私の学習不足のため誤っているところがあるのは、ご容赦ください)。また、「送りがな」は「カタカナ」で表し、対象となる漢字の右下に記述します。次の画像は縦書きで「訓読文」を表現したものです。
書き下し文についての独習
「書き下し文」とは、「訓読文」を日本語の語順で書き表したもので、それを読めば「読み下し文」と呼ぶらしいが、私はあまり使い分けていないので、混同して用いることがあります(これは良くないことかもしれません)。
この「書き下し文」では、通常、漢字は「新字体」として、「現代仮名遣い」で表記するようにしています(ただし、これも歴史的仮名遣いのときと同様に、私の学習不足のため誤っているところがあるのは、ご容赦ください)。
以下に、「静夜思」の書き下し文を例示しておきます。
静夜思(せいやし) 李白(りはく)
牀前(しょうぜん) 月光(げっこう)を看(み)る、
疑(うたが)うらくは是(こ)れ 地上(ちじょう)の霜(しも)かと。
頭(こうべ)を挙(あ)げて 山月(さんげつ)を望(のぞ)み、
頭(こうべ)を低(た)れて 故郷(こきょう)を思(おも)う。
独習のまとめ
- 「白文」は、原文としての漢文を呼ぶ
- 「白文」では、主に「本字」を使用する
- 独習では、句読点があるものも「白文」に含める
- 「訓読文」は、「白文」に「返り点」や「送りがな」を付けたものを呼ぶ
- 「訓読文」では、「歴史的仮名遣い」を用いる
- 「訓読文」の「送りがな」は「カタカナ」で表し、漢字の右下に記述する
- 「返り点」のみで「送りがな」がない場合の漢文も「訓読文」とする
- 「書き下し文」は、「訓読文」を日本語の語順で「送りがな」を付けて書き表したものを呼ぶ
- 「書き下し文」は、「新字体」および「現代仮名遣い」で記述する
- 「読み下し文」と呼ぶこともある
今回のキーワード
白文、訓読文、書き下し文、読み下し文、本字、正字、新字体、旧字体、標点符号、歴史的仮名遣い、現代仮名遣い、返り点、送りがな、静夜思、李白
今回の勉強で使用したテキスト
前野直彬(2015年)『漢文入門』筑摩書房
加藤徹(2013年)『白文攻略 漢文法ひとり学び』白水社
古田島洋介・湯城吉信(2011年)『漢文訓読入門』明治書院
石川忠久(2009年)『漢詩鑑賞辞典』講談社
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