2018年12月21日金曜日

『三体詩』より「元史君が楚より越に移るを送る」(劉商)

【訓読文】

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【作者】

劉商(りゅうしょう)= 生没年未詳。中唐の詩人。字は子夏。

【読み下し文】

元史君(げんしくん)が楚()より越(えつ)に移(うつ)るを送(おく)る

露冕(ろべん) 春(はる)に行(めぐ)りて 若耶(じゃくや)に向(むか)う。野人(やじん) 恵(けい)に懐(なつ)いて 家(いえ)を移(うつ)さんと欲(ほっ)す。

東風(とうふう) 二月(にがつ) 淮陰郡(わいいんぐん)。惟()だ見()る 棠梨(とうり) 一樹(いちじゅ)の花(はな)。

【語釈】

元史君=人名。未詳。史君は官家の尊称。「使君」のこと。=現在の江蘇省淮安市辺り。=現在の浙江省紹興市辺り。露冕=冕は、天子から大夫までが礼式に用いた冠のこと。後漢の郭賀が顕宗(明帝)より冕を賜い、それを露わにして住民に見せ、郭賀に徳が有ることを示した故事による。「三体詩評釈(野口寧齋)」に、「露冕は、漢郭賀の事を用ゆ。賀の荊州に刺史たる民其徳を歌う。顕宗特に黼黻冕旒を賜い、行郡の次、其譫帷を去り、百姓をして有徳を知らしめたる者。以て去者に比す移家は古公亶父の事を用ゆ。」、とあり。若耶=地名。浙江省紹興にある景勝地。「にゃくや」と訓んでいる解説もあり。野人=庶民のこと。懷惠=元史君の徳に懐く。東風=春風。淮陰郡=江蘇省淮安市。棠梨=やまなし。果樹の一種。バラ科の落葉低木。別名「姫海棠」。一樹花=「三体詩評釈」では、「花」字を「華」としている。


では、次の記事で、また、お会いしましょう。
失礼します。

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