2019年2月4日月曜日

『三体詩』より「朱拾遺に寄せ別る」(劉長卿)

【訓読文】

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【作者】

劉長卿(りゅうちょうけい)=生没年未詳。唐代中期の詩人。字は文房。

【書き下し文】

朱拾遺(しゅしゅうい)に寄()せ別(わか)る

天書(てんしょ) 遠(とお)く召()す 滄浪(そうろう)の客(かく)。幾度(いくたび)か 岐()に臨(のぞ)みて 病()んで未(いま)だ能(あた)わず。

江海(こうかい) 茫茫(ぼうぼう)として 春(はる)、遍(あまね)からんと欲(ほっ)す。行人(こうじん) 一騎(いっき) 金陵(きんりょう)を発(はっ)す。

【語釈】

  • 朱拾遺=伝未詳。拾遺は、官名。
  • 天書=天子の命令書。
  • 滄浪客=逐臣。解任された臣下のこと。楚辭に「滄浪之水清兮 可以濯吾纓、滄浪之水濁兮 可以濯吾足(滄浪の水清まば、以て我が纓を濯うべく、滄浪の水濁らば、以て我が足を濯うべし。)」の句あり。
  • 臨岐=岐路に立っての意。
  • 江海=川と海。
  • 茫茫=広々として果てしないさま。
  • 行人=旅人。
  • 金陵=地名。現在の江蘇省南京市。

【余説】

この詩、第二句、第四句に押韻し、韻字は蒸韻「能・陵」。七言絶句では、通常、第一句も押韻するが、ここでは「客」の仄字となり押韻していない。このように本来、押韻する所を押韻しないことを「踏み落とし」と呼ぶ。

「踏み落とし」にも一応規則がありますが、この詩の場合、その規則にも因らない破格の詩です。


では、次の記事で、また、お会いしましょう。
失礼します。

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