【訓読文】
【作者】
劉長卿(りゅうちょうけい)=生没年未詳。唐代中期の詩人。字は文房。
【書き下し文】
朱拾遺(しゅしゅうい)に寄(よ)せ別(わか)る
天書(てんしょ) 遠(とお)く召(め)す 滄浪(そうろう)の客(かく)。幾度(いくたび)か 岐(き)に臨(のぞ)みて 病(や)んで未(いま)だ能(あた)わず。
江海(こうかい) 茫茫(ぼうぼう)として 春(はる)、遍(あまね)からんと欲(ほっ)す。行人(こうじん) 一騎(いっき) 金陵(きんりょう)を発(はっ)す。
【語釈】
- 朱拾遺=伝未詳。拾遺は、官名。
- 天書=天子の命令書。
- 滄浪客=逐臣。解任された臣下のこと。楚辭に「滄浪之水清兮 可以濯吾纓、滄浪之水濁兮 可以濯吾足(滄浪の水清まば、以て我が纓を濯うべく、滄浪の水濁らば、以て我が足を濯うべし。)」の句あり。
- 臨岐=岐路に立っての意。
- 江海=川と海。
- 茫茫=広々として果てしないさま。
- 行人=旅人。
- 金陵=地名。現在の江蘇省南京市。
【余説】
この詩、第二句、第四句に押韻し、韻字は蒸韻「能・陵」。七言絶句では、通常、第一句も押韻するが、ここでは「客」の仄字となり押韻していない。このように本来、押韻する所を押韻しないことを「踏み落とし」と呼ぶ。
「踏み落とし」にも一応規則がありますが、この詩の場合、その規則にも因らない破格の詩です。
では、次の記事で、また、お会いしましょう。
失礼します。
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