2019年1月21日月曜日

『三体詩』「華清宮」の平仄を調べる

【訓読文】

この詩は『三体詩』より「華清宮」(杜常)で解説しています。

今回から何回かに分けて、上の「華清宮」の詩を使って、いろいろ試験(実習と言ってもいいかもしれません)をしてます。

まずは、「平仄」を調べます。

平仄」を調べる際に、「四声」が何かという概略を知る必要があります。これについては、『字音・声母・韻母・声調など字音について独習してみた(承前)』の記事を参照してください。

つぎに「平仄」と「四声」の関係を知らなければなりませんが、これも以前の記事で取り上げています。『平水韻について独習してみた』の記事を参照してください。

さて、先の二つの記事を読めば、「四声」である「平声」、「上声」、「去声」、「入声」を「平」と「仄」の二つに分類することが理解できると思います。次は、漢和辞典で各漢字の平仄を調べる段階になります。

漢和辞典では漢字一文字ごとに、その四声が図で表現されることが多いのですが、一般に左下角に○や△などの記号で「平」を表し、その他の三箇所の角は、無印あるいは●や▲が記されて「仄」を表しています。

ここでは適当な「漢和辞典」を使って実際に調べてみましょう。私は、手元にある角川書店の「新字源 改訂新版」を使って調べていますが、四声が掲載されていれば、その他の漢和辞典でもかまいません。

まずは、試しに「上」字を調べると、二種類の「四声」が出ています。一つは「上声」、もう一つは「去声」であることがわかります。何れにしても、「仄」の字であることがわかります。

同様に「作」字を調べると、「上声」、「去声」、「入声」であることから、やはる「仄」の字であることがわかります。

つぎは「元」の字を調べると「平声」であることがわかるので、「平」の字であることが容易に調べることができます。

このように「上去入」の各四声しか持たない文字は「仄」、反対に「平声」しか持たない文字は「平」になります。

では「風」の字はどうでしょうか?

「風」は「平声」と「去声」の二種類を持っています。さて、「平」の字でしょうか、それとも「仄」の字でしょうか、あるいはどちらでもよいのでしょうか。

ここで辞書をよく見ると、番号で分類してあり、新字源では「一」が「平声」、「二」が「去声」となっています。これは、意味によって「平声」か「去声」かが異なることを意味しています。

つまり「かぜ」の意味の場合は「平声」、「ほのめかす」あるいは「感化する」の意味の場合が「去声」であることがわかります。そのため上の詩の「暁風」、「西風」は、どちらも「かぜ」ですから「平」の字ということになります。

それでは、上の詩の平仄を調べれば、次のようになるでしょう。

 平仄平平仄仄平 仄平平仄仄平平
 行尽江南数十程 暁風残月入華清

 平平仄仄平平仄 平仄平平仄仄平
 朝元閣上西風急 都入長楊作雨声

このとき「平」「仄」と文字で表すこともありますが、簡易的には「平」の字を「○」、「仄」の字を「●」で表現することがよくあります。では、この丸印を使って表現すると、以下のようになります。

   ○●○○●●○ ●○○●●○○
   行尽江南数十程 暁風残月入華清

  ○○●●○○● ○●○○●●○
  朝元閣上西風急 都入長楊作雨声

さて、少し面倒ですが、作詩のための読詩を心がける第一歩は「平仄」を意識して、最初のうちは「平仄」がわかりませんから、とにかく「漢和辞典」を手元に置いて「辞書」を引きながら「読む」ことを練習してみましょう。

大変ですけど、慣れてくると辞書を引くことが楽しくなりますよ。

では、次の記事(実習)で、また、お会いしましょう。
失礼します。

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