2019年1月5日土曜日

『三体詩』より「韋曲」(唐彦謙)

【訓読文】

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【作者】

唐彦謙(とうげんけん)=(?〜?)。晩唐の詩人。字は茂業。

【書き下し文】

韋曲(いきょく)

愁腸(しゅうちょう)を写(うつ)さんと欲(ほっ)して 不才(ふさい)を愧()ず。多情(たじょう) 練漉(れんろく)して 已(すで)に低摧(ていさい)す。

窮郊(きゅうこう) 二月(にがつ) 初(はじ)めて離別(りべつ)す。独(ひと)り寒村(かんそん)に倚()りて 野梅(やばい)を嗅()ぐ。

【語釈】

韋曲=長安に存在した地名。欲寫=書き写すこと。愁腸=うれうる心。さびしい気持ち。大切な人を失った気持ちにいう。愁心、愁襟、愁緒に同じ。愧不才=才能がないことを恥じる。多情=感情に富むこと。感受性が豊かなこと。練漉=練は生糸を灰汁で煮て白くやわらかくすること。漉は水や酒をこすこと。多情な心をこしてひとつの事柄に帰結(悲しい心に)する意か。低摧=くだくこと、かなしむこと。窮郊=遠くの郊外。寒村=さむざむとした村。嗅野梅=野に咲く梅花の臭いをかぐ。「齅」は「嗅」の異体字。王羲之が晋乱に際して、終日花の香りを嗅いで何も言わず、時の人はその意を誰も会しなかったという故事あり。


では、次の記事で、また、お会いしましょう。
失礼します。

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